ケアマネジャーは月に1回以上、自宅を訪問して状況を確認する義務があります。ただ多くの家族が、この訪問を「報告を受ける場」として受け身に過ごしています。実際にはもっと使える存在で、困ったときに頼る習慣をつけておくと介護生活が格段に楽になります。 困ったことは何でもまず連絡して良い 「こんなことを相談していいのか」と遠慮する方が多いですが、ケアマネジャーへの相談に内容の制限はありません。以下のようなことは、どれも連絡して構いません。 夜中に転倒した 急に食欲がなくなった 近所との関係が悪化している 家族が限界に近い 解決できないことでも、次につなぐ窓口を知っています。一人で抱え込む前に、まず電話一本かけてみてください。 「対応が遅い」「話を聞いてもらえない」と感じたら ケアマネジャーは一人で30〜40人程度の利用者を担当しています。繁忙期には連絡が遅れることもあります。ただ、何度連絡しても対応が遅い、こちらの話をあまり聞いてもらえないという状態が続くようであれば、担当を変えることを考えても良いです。変更は地域包括支援センターか市区町村の介護保険担当課に相談すると動いてもらえます。現在のケアマネジャーに直接言いづらければ、窓口経由で変更できます。 担当が変わるときの引き継ぎは心配せず ケアプランや利用中のサービスはそのまま継続されます。一から説明し直す手間はありますが、サービスが途切れることはありません。新しいケアマネジャーには、前の担当との経緯や気になっていた点を率直に伝えると、最初から関係を築きやすくなります。 「この人に頼んでよかった」と思えるかどうかが大切 介護は数年単位で続くことがほとんどです。その間、家族の代わりに多くの調整を担ってくれる人なので、信頼できるかどうかは生活の質に直結します。合わないと感じながら我慢し続ける必要はなく、より良い関係を求めて動くことは、本人にとっても家族にとっても自然なことです。
介護サービスが始まった。家族が最初に戸惑うこと。
実際に介護生活が動き出すと、新たな困りごとが出てきますよね。 ヘルパーさんが「家族のことはできない」と言います 訪問介護を使い始めて最初に戸惑うのがこれです。ヘルパーが自宅に来ているのに、同居家族の分の食事は作れない、家族のものは洗濯できない、と言われる場面があります。 これは手抜きではなく、介護保険の制度上の決まりです。訪問介護は本人への支援に限定されており、家族へのサービス提供は認められていません。不満に思う前に知っておくと、気持ちが楽になります。 月の途中でサービスを変えたくなることがあります 実際に使い始めると「デイサービスの回数を増やしたい」「ヘルパーの時間帯を変えたい」という気持ちが出てきます。こういった変更はケアマネジャーに伝えればケアプランを修正してもらえます。遠慮せず伝えて構いません。ケアプランは固定ではなく、状況に合わせて変えるものです。 区分支給限度額を超えそうになったら 要介護度ごとに介護保険で使える金額の上限があります。ケアマネジャーが管理しているので通常は超えませんが、状態が急に悪化してサービスを急増させた場合など、上限を超える部分は全額自己負担になります。サービスを追加したいときは必ずケアマネジャーに限度額の残りを確認してから動くと安心です。 「もう少し休みたい」は我慢しなくてよいです 介護をする家族が疲弊して倒れると、介護そのものが続かなくなります。ショートステイは本人のためだけでなく、家族が息を抜くためにも使える制度です。後ろめたさを感じる方も多いですが、ケアマネジャーに「もう少し休みたい」と伝えることは、介護を長く続けるために必要なことです。 領収書は必ず取っておいてください 介護サービスの利用費は、確定申告の医療費控除の対象になるものがあります。訪問介護や通所介護など、療養上の世話に該当するサービスの自己負担分が対象です。年末にまとめて探すと大変なので、月ごとに封筒に入れておくだけで十分です。
親の状態が悪くなってきた。介護度は見直せます。
介護認定は一度取ったら終わりではありません。状態が変わったと感じたときは、いつでも区分変更の申請ができます。半年や1年、更新時期を待つ必要はありません。 転倒が増えた、一人でトイレに行けなくなった、認知症の症状が進んだ、そういった変化があれば区分変更申請を検討してください。現在の要介護度のままでは使えるサービスの上限が足りなくなっていることがあります。申請はケアマネジャーに「区分変更をお願いしたい」と伝えるだけで動いてもらえます。 区分変更と更新申請の違い 介護認定には有効期限があり、期限が近づくと「更新申請」の案内が届きます。これとは別に、有効期間の途中でも状態の変化を理由に申請できるのが「区分変更申請」です。更新を待たずに動いて構いません。 認定結果に納得できない場合は、結果通知を受け取った翌日から60日以内に不服申し立てができます。申し立て先は都道府県の介護保険審査会です。調査当日だけ頑張ってしまい実態より軽い認定が出ることは珍しくなく、そういった場合はケアマネジャーに相談すると手続きの流れを教えてもらえます。 状態が改善したときも同様です リハビリの効果が出て状態が良くなった場合も、実態に合った認定を受け直すことが大切です。必要以上に高い要介護度のままでいると、過剰なサービスが組まれてしまうことがあります。状態の変化は悪化だけでなく改善も、ケアマネジャーに積極的に伝えるようにしてください。 介護は状態が変わり続けるものです。そのたびに制度を使い直せることを、頭の片隅に置いておいてください。
親の退院が決まった。介護保険、何から始めるか。
突然のことで、頭が追いつかないまま退院の日が近づいている、という方も多いと思います。順番に整理していきます。 まず病院の中に頼れる人がいます 病院には「地域連携室」や「医療相談室」という窓口があります。担当しているのは医療ソーシャルワーカーという専門職で、退院後の生活をどう整えるかを一緒に考えてくれます。介護保険の手続きや、退院後に使えるサービスの調整も相談できます。 看護師に「退院後のことを相談したい」と伝えるだけでつないでもらえます。一人で抱え込む前に、まずここに声をかけてみてください。 介護保険の申請は早いほど良い 申請窓口は住んでいる市区町村の介護保険担当課、または最寄りの地域包括支援センターです。本人が動けなくても、家族が代わりに申請できます。必要なものはこれだけです。 介護保険被保険者証(65歳になると自動的に届いています) 本人確認書類 申請書(窓口でもらえます) 主治医への意見書は市区町村が直接依頼するので、家族が用意する必要はありません。 早めに動いた方がよい理由は単純で、認定が出るまで原則30日かかる一方、サービスを使えるのは申請日まで遡るからです。退院を待たず、入院中に申請できます。 認定調査のとき、意識すること 申請後、市区町村の調査員が本人のもとを訪ねて聞き取りを行います。入院中なら病室で行われることもあります。 このとき、普段の様子を正直に伝えることが大切です。調査当日だけ頑張って「できます」と答えてしまうと、実際より軽い認定が出てしまうことがあります。転倒しやすい、時間がかかる、一人ではできないことがある、そういった日常の状況をあらかじめメモしておいて、調査員に見せると助けになります。 認定結果が届いたら 申請からおよそ1ヶ月後、自宅に認定結果が郵送されてきます。結果は「非該当」「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかです。 要支援・要介護と認定されると、介護保険のサービスが使えるようになります。ただし、認定証が届いてすぐサービスが始まるわけではありません。次のステップがあります。 ケアマネジャーを選ぶ 要介護1〜5の認定が出たら、まずケアマネジャーを選びます。ケアマネジャーは正式には介護支援専門員といい、どのサービスをどの頻度で使うかをご本人・家族と一緒に考え、サービス事業者との調整も担ってくれる人です。費用は利用者の負担なしです。 ケアマネジャーは「居宅介護支援事業所」という事務所に所属しています。どこに頼めばよいかわからなければ、地域包括支援センターか市区町村の窓口で近隣の事業所一覧をもらえます。最終的には相性も大切なので、最初の一事業所に決めてしまっても、合わなければ途中で変更できます。 要支援1・2の場合は、ケアマネジャーではなく地域包括支援センターが窓口になります。 ケアプランができると、サービスが始まります ケアマネジャーが決まると、ご本人の状況をもとにケアプランを作成します。ここで初めて、具体的なサービスの内容と頻度が決まります。 使えるサービスは大きく分けると以下です。 訪問介護 ヘルパーが自宅を訪問し、入浴・排泄・食事の介助や掃除・洗濯などを行います 通所介護(デイサービス) 日中、施設に通って食事・入浴・リハビリを受けます。家族の介護負担を減らす意味でも使われます 短期入所(ショートステイ) 数日〜数週間、施設に泊まります。家族が休息を取りたいときや、急な用事のときに使えます 福祉用具貸与 介護ベッド・車椅子・手すりなどをレンタルできます。購入より貸与が原則です 費用について サービス費用の自己負担は原則1割です。所得によって2割または3割になる場合があります。ただし、要介護度ごとに「区分支給限度額」という上限があり、それを超えた分は全額自己負担になります。ケアマネジャーが限度額の範囲内でプランを組むので、基本的に知らないうちに超えてしまうことはありません。